ブルゴーニュのこれから
ルイ・ジャド社恒例の バレルテイスティング2022年にお邪魔しました。
ボーヌの中心にメゾンを構えるジャド社はブルゴーニワインを支えてきた重鎮といっても良いと思う。今回醸造責任者 フレデリック・バルニエ氏からは専門性の高いデータをわかりやすく説明してくれた。
暖かい冬によって早まる萌芽、遅霜、雹、高温・・・。説明の7割近くが栽培についての懸念とそれに対する対処だった。おそらく彼は伝えなくてはならないことを伝えたかったのだと思う。
実際ここ数年、危機的とも言える減収量が続いていた。その為ブルゴーニュワインは異常なほど高騰し、購買意欲に影をさしている。
萌芽時期の遅霜リスクはブルゴーニュだけでなく、他の生産地域も同様で、すでにボルドーでは3月には芽が膨らんでおり、このあとの霜をとても警戒している。
ジャドでは、現在芽吹きの遅い苗木への転換のために9種の台木を独自に研究しているという。また醸造施設へ投資を行い、収穫後の選果作業を空調管理下で行えるようにしている。ブルゴーニュではすでに9月の収穫はなく、8月中に収穫が終わってしまうという現状があるため、高温下での選果実作業のリスクに対処するためである。
ジャド社は大手メゾンで、その資力の範囲での対処が可能であるけれど、ブルゴーニュ には家族経営の小規模ドメーヌがたくさんある。彼らは古木、1haにも満たない区画の銘醸畑を有し、限られた生産量で高い希少価値を誇るものも少なくない。これらの秀逸な小規模ドメーヌはどう対処するのであろうか?
ジャド社は多くの銘醸区画、自社畑を有しており栽培や醸造経験は豊富で、造り上げるワインは素晴らしい。言ってみればボーヌやニュイのアペラシオンの隅々まで常に見渡すことができる。
そしてフレデリック・バルニエは最高栽培責任者として責任を持ってそれらを統べるのであるから、ある意味彼はブルゴーニュ全体を支えている。
「2022年は我々の醸造タンクがいっぱいになった」と言っていた。
実はこの言葉を聞いた時、私の脳裏にここ数年彼が満たすことのできなかったタンクを見上げる彼の姿を想像してしまった。
あらためて私たちの手元に届くまでの努力が痛いほど伝わった。
さて、肝心のテイスティングはというと、瓶詰め前の出来立てほやほやの貴重なワインベイビーズ。どれも柔らかく果実の甘味が新鮮で美味しい。味わいの違いを細かく探るのも無粋だ。無条件でカワイイ子猫のようなものだし!? 比べるなんて酷だ。 大人の姿なんてまだわからないし。(そもそも大きくなってみたらドラ猫だったら!!・・・それはそれでいいじゃないか!!!)
新しいワインは成長を楽しみに購入するべきで、予めポテンシャルだの何だと決めつけなくてもいいのだ。と、個人的には考えている。どんなワインになるかを想像すること自体が楽しみ以外のなにものでもないから、ホント。
rirei Hashizume
毎年作られるバレルテイスティング カタログ
試験中の台木の区画の見取り図
ジャドの最高栽培醸造責任者フレデリック・バルニエ氏
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